3年B組鋼の先生 1

 

午前8時。セントラル高校も、朝のホームルームを告げるチャイムが鳴り、

3年B組も、ホームルームが始まる。

ガラガラと扉を開けて入ってきたのは、科学教師であり、このクラスの担任でもある、

エドワード・エルリック。

エドワードは気さくで感じのいい教師だったため、生徒には基本
「エド先生」と呼ばれ、結構人気が高い。

エドは教室に入ると、名簿を教卓へ置き、ざっと教室の中を見渡した。

教室の中の生徒はちゃんとチャイムの音を聞いて座っているので、エドは指導力も高いといえよう。

(今日も欠席者なし)

エドが心の中でつぶやくと同時に、日直のアルフォンス・ハイデリヒが、号令をかける。

「きりーつ」

ガタタッ

「れい」

ぺこり

「ちゃくせーき」

ガタタッ

号令がかけ終わると、エドはすぐにチョークを持って、話し始める。

「うし。んじゃ、すぐ本題はいるぞー」

そう言ってサクサクと黒板に字を書いていくのだが、

「せ、せんせぇー」

と、ウィリンリィ・ロックベルが、すぐに挙手する。

「なんだロックベル。今授業中じゃねーぞ」

「そんなのわかってます」

目を見開いて尋ねるエドのマジボケを軽くあしらいながら、ウィンリィは、言いにくそうに続ける。

「あの、先生・・・」

「なんだ?」

「黒板の字が・・・、見えないです」

ウィンリィはそう言うと、苦笑いをして、クラスは凍りついた。

エドは身長が小さい。しかし本人はそれを気にしてるため、本人の前で言ったら、キレるのである。

そして今の黒板の字は、エドの全長と同じ高さに書いてある。

そのため、一番前の席のウィンリィはともかく、一番後ろの生徒も、字が見えないのだ。

「ロックベル・・・、おまえ・・・」

少し声が小さくなった担任の姿を見て、クラスの全員が身構える。

ヤバイ、キレるか、と。

しかし、帰ってきたエドの言葉は、予想を大きく上回るもので・・・。

「ロックベル、おまえ、一番前の席なのに見えねえのか?メガネ買ったらどうだ?」

その言葉に、ウィンリィを含めた全員が安心し、教室の空気が緩む。


だがそれで安心してはいけない。まだ黒板の字は見えないのだ。

ウィンリィは、そこまで自分の視力の心配をしてくれる先生は、教師の鏡だと考えながら、

頭を悩ませる。

(うーん・・・。あたし視力は正常だしなあ・・・。ていうか、何も解決してないよね。 

でも、先生に身長が小さくて見えないとか言ったら怒られるし・・・)

その時。ウィンリィの心遣いをぶち壊しにしてしまう生徒がいた。それは・・・。

「先生、黒板の字が低くて見えません」

「マスタング・・・!!」

ロイ・マスタングであった。

ロイはエドのことがすきだの好きじゃないだの、ホモだのホモじゃないだの、タラシだの、

まあ、様々な噂が存在した。

そんなロイは、唯一(?)エドにケンカを売れる存在でもある。

そして売られたエドも買ってしまうため、クラスの連中はとめようとはしない。

「てめえ、マスタング。今何て言った?」

「いいですよ、先生。 字が(先生の身長で)低くて見えないって言ったんです」

「てめえ日本語間違ってねえか?字は低くて見えないっていわねえぞ」

「いやだなぁ、先生。僕が低いって言ったのは、字じゃなく、先生の身長のほうですよ」

クラスの空気が凍ってしまった。もうピリピリなんてレベルではない。ビンビンだ。

そんな原因を作ったロイは、ニコニコとしていて、罪のかけらも無い。

「おい、マスタング・・・!!」

ロイ以外の生徒は全員聞いた。エドの何かが、ぷつんと切れる音を。

「だ~れが・・・・・・」

エドから禍々しい殺気が放たれる。

「目にも見えねえミジンコドチビじゃ!!!!!」

エドは声を荒げながら、ロイにチョークを投げつける。

ロイはそのチョークを軽々とよけながら、笑っている。

クラスメイトは、ため息をついている。

「あーあ・・・。ロイくんったら・・・。買っちゃう先生も先生だけど・・・」

ボソっとウィンリィがつぶやいたとき、一人席を立ったのは、リザ・ホークアイ。

「どっちもどっちですね」

そう呟くと、リザは、すうっと息を吸う。

「リザちゃん!?なにするの!?」

ウィンリィの静止も聞かず、息を吸ったリザはその直後―

耳を疑った。

連載

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3年B組鋼の先生 3 

3年B組鋼の先生 4

3年B組鋼の先生 5

 

 

短編 

HAPPY BIRTH DAY TO YOU!!

 

 

 

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