3年B組鋼の先生 2

 

 

そこは、見渡す限りの、地獄。 

教室のドアは無残にも蹴られて無くなり、いくつかの机はなぎ倒されている。

そして黒板の前にいるのは、

担任――だった人。

そう。エドワード・エルリックは、もう反応しない。

もう笑いかけることも、話を聞くこともできない。

「う・・・うそでしょ、先生・・・・・・!」

ウィンリィが、泣きそうな声で呟く。

周りのクラスメイトも、シンと黙っている。

「先生・・・。僕、先生のこと、一生忘れません!!」

ロイがそう叫ぶと、他のクラスメイトも、「そうね・・・」、「先生、安らかに・・・!」と続く。

みんなの悲しみがピークに達したとき、

「いやオレ、死んでねえし」

エドワード・エルリックは、がばりと身を起こした。


エドの生き返りの衝撃で、クラスは一瞬固まった。

だがすぐに、3Bの生徒は自分の席に着くと、エドの話をおとなしく聞いていた。

「いいか、おまえら。何で勝手に人殺してんだよ。まだ生きてるっつーの。

つーか誰か脈確かめるとかしろよ、アルフォンスとかホークアイとか、できんだろ」

「すみません、先生・・・ビックリしちゃって」とアルフォンス。

「そこまで考えが及びませんでした」とリザ。

ホークアイのは絶対うそだよな、とエドが思っているときに、ウィンリィがうれしそうに話す。

「でもよかった。先生が死んじゃって無くて」

「人はあんな簡単に死なねぇ」

ウィンリィにツッコミを入れながら、少しうれしく思っていると、次はロイが口をあけた。

「でも先生。出だしがあんなのだったんですから、やっぱり死んでたことにしません?

なんていうか、せっかくインパクトを大きくしたのに、これじゃ台無しです」

なんてことを笑顔でさらりと言うのが、ロイ・マスタングという男なのだ。

「マスタング・・・。テメーって男は・・・!!」

エドが殺意のこもった目で睨む。

しかし周りからは、「確かにそうかも」、という声が聞こえてくる。

「ちょ・・・、ちょっとおまえら!!それはいくらなんでもひどすぎだろ!」

エドが涙目で抗議しても、ロイ側の意見は消えない。

そのうちウィンリィまでもが、

「やっぱり死んでたほうがなんていうか・・・、シリアスになったかもねー」

などと言い出す始末。

ああ、オレもう明日から学校きたくない・・・とエドがいじけ始めたとき、立ち上がったのが、

我らが3Bの良心、アルフォンス・ハイデリヒである。

アルフォンスは席を立つと、エドのそばへ行き、

「みんな、先生に何てこと言うの!!先生は大変な目にあったんだよ!!」

と、エドをかばってくれる。

アルフォンス・・・と、エドが今までとは違う涙を流しそうになったとき、アルフォンスは、

「こんなに小さいけど、この人は僕らの先生なんだ!!!だからそんなこと言うのはやめよう!!」

と、言い放った。


エドは真っ白に燃え尽きる。小さいといわれた悲しみで。

そして、さっきの地獄のような記憶が、蘇ってきたのだった。



それは、10分前にさかのぼる。リザ・ホークアイが思いっきり空気を吸ったとき、

「うるせえええッッッッッ!!!!」

という怒号と、教室の前方にあるドアが蹴り飛ばされる音が、一度にした。

3Bの、エドも含める全員が、一瞬状況を理解できなかっただろう。

ロイとケンカしていたエドも。

ため息をついていたウィンリィも。

傍観者でいたハボックも。

エドとロイ、どちらを止めるか迷っていたアルフォンスも。

唯一ケンカを止めようとしたリザも。

みんな、わからなかっただろう。

どうして・・・、どうして、3年A組の担任、

イズミ・カーティス先生がいるのか。

連載

 3年B組鋼の先生                                                  

3年B組鋼の先生 2 

3年B組鋼の先生 3 

3年B組鋼の先生 4

3年B組鋼の先生 5

 

 

短編 

HAPPY BIRTH DAY TO YOU!!

 

 

 

ブログへ