エドの衝撃の発表のあと、クラス中がぎゃあぎゃあと騒ぎ出した。
だがその騒がしさにも負けず、エドは
『3年B組で最も頭が悪い人ランキング~』 の紙を必死になって黒板に張ろうとしているのだが、
一向に黒板に背が届かない。
それを見かねたアルフォンスが、そっと席を立って、手伝ってあげている。
「ア・・・、アルフォンス・・・!!」
目に涙をあげてこっちを見てくる担任に、アルフォンスは優しく笑いかける。
「いいんです、先生。先生が困ったときは、生徒が助けないと」
にこりと笑うアルフォンスを見て、エドも控えめに笑う。
「アルフォンス・・・。おまえ、学級委員長の鏡だなぁ・・・・・・」
エドはそう言ってアルフォンスを見上げるが、アルフォンスは何がどうなっているのかわからない顔を
している。
「あの、先生・・・。僕、学級委員じゃないんですけど・・・」
「は!?」
エドの目に溜まっていた涙は一気に引いて、エドはアルフォンスをまじまじと見る。
「アレ。おまえ、学級委員じゃなかったっけ?」
「はい。違いますけど」
「え・・・。じゃあ、ホントの学級委員誰だよ」
クルリとみんなのほうを見て、エドは誰にでもなく聞く。
と、そのとき、答えるものがいた。
「僕ですよ、先生」
「んな・・・っ!!」
エドが顔を引きつらせた理由は、その学級委員の姿である。
学級委員は、あろうことか、ロイ・マスタングだった。
「おいおい、待てよマスタング。冗談やめろって」
顔を青くして手を振るエドを見ながら、
「冗談じゃないですよ」
と、にこにこしてロイは答える。
そんなロイに向かって、エドは「嘘だ!!!」と叫ぶ。
しかしそれは事実で。
「嘘じゃありませんよ」
静かに口を開いたのは、リザ・ホークアイ。
「ホークアイ・・・!」
「先生、学級委員長兼、風紀委員長は、ロイ・マスタングで間違いありませんよ」
「・・・マジかよ・・・っ!」
「ちなみにどっちも副委員長は私です」
リザは、あくまで生真面目に答える。
「というわけなんで先生。よろしくおねがいしますよ」
あくまでさらりとさわやかに言うのが、ロイ・マスタングという男なのだ。
「・・・ま、いいや。とにかく、
『3年B組で最も頭が悪い人ランキング~』
発表するぞ!!』
覚悟決めろよ、とエドは付け足して、クラスメイトはごくりと喉を鳴らす。
「ドルルルルルルルルルルルルルルル」
エドは口でドラムロールを口ずさみながら、紙全体に貼ってあるふせんを少しずつはがしていく。
「ルルルルルルルルルルルルルルルル」
エドはあくまで少しずつ少しずつはがしていく。
「ルルルルルルルルルルルルルルルル」
エドは慎重にはがしていく。
「ルルルルルルルルルルルルルル――」
「しつこいわ!!!!」
「ルルンッ!!!」
生徒全員のツッコミで、エドはようやく終わらせる。
「はっ ぴょー します!!!」
「普通さっきのドラムロールの最後で発表するんですよ」
誰かが冷ややかツッコミを入れたためか、エドはふせんをはがすのをやめて、
「もういい。口で言う」
と言って、ふせんの後ろをチラチラと見る。
『3年B組で最も頭が悪い人ランキング~』
の結果を、エドは口で伝える。
「第11位!!ドゥルルルルルルル――」
「さっさと発表してください!」
アルフォンスからのツッコミをうけ、エドはしぶしぶ普通に発表する。
「第11位!ホークアイ!!」
わーとぱらぱらとした拍手が起きる。
だがエドは、
「あー、イチイチ拍手すんな。めんどいから」
と言って止める。
「はーい、第10位!アルフォンス!!
あー、めんどい。もうイッキに発表しちゃうから。
9位、ヒューズ! 8位、シェスカ! 7位、ロス! 6位、フュリー! 5位、ブレダ!
4位、ブロッシュ! 3位、ハボック!」
エドはそこまでいうと、一度言葉を止める。
「さーて、残るは1位と2位、マスタングとロックベルだけだな」
そういうとエドはにやりと笑った。
「さーて、どっちが最も頭が悪いのかな?」
ニヤニヤとした笑いを残したまま、エドがゆっくりと口を開いた――。 |