ロックオンと刹那は、悪の組織を倒すため、思いっきり走っていた。
だが、いくらなんでも、20代後半になろうとしているロックオンには、これはちょっとキツい。
その証拠にロックオンの息は、絶え絶えになっていた。
「せっ・・・せつっ、おぇっ。せつなあ・・・っ」
「なんだ、ロックオン」
「おまえ・・・どうして平気なんだよ・・・」
「なんでって・・・」
ロックオンに質問された刹那は、一瞬戸惑ったものの、すぐに軽い笑みを浮かべ、
「だってオレ、ガンダムだし」
と答えた。
その答えを聞いたロックオンは、そっかあ・・・ならしょうがないよね、とあきらめる。
「せっ、せつな・・・っ、どこにあんだよ、悪の組織って・・・。
つーか、ホントに悪の組織って名前なのかよ・・・っ。おえっ」
「ロックオン、老化してきてないか? 大丈夫だ、悪の組織はもうすぐだし、悪の組織は悪の組織だ」
「こっ、こた・・・っ、答えになってねーぞ・・・」
ロックオンのカッコイイセリフも、息が切れているとなんてことなく、刹那はもっとスピードを出して走っていってしまう。
「せっ、刹那ぁ、待て・・・っ!!」
ロックオンも吐きそうになるのを必死にこらえながら、刹那に追いつく。
すると刹那は、急停止をして、ロックオンはその背中に激突する。
「いってえな、刹那・・・! 急に止まんなよ・・・って、どうした・・・?」
ロックオンは、前をガン見している刹那を不思議に思い、たずねる。
「ロックオン・・・」
「なんだよ?」
「あれ、悪の組織だと思うんだが」
「え?」
地面に座ったまま、ロックオンが見た人物。
それこそが、紫色の髪を持ち、ピンク色のカーディガンを着た、ティエリア・アーデ。
「・・・・・・」
ロックオンは、その姿に唖然としながら、すぐに刹那の考えを打ち消す。
「いやいやいやいや、ないでしょ刹那!どう見てもあの子、普通の女の子じゃん!悪の組織とかじゃないじゃん!
きっとあれだよ、ただ目つきが悪いだけだよ!近づきにくいオーラを放ってるだけ!
クラスで一人はいるじゃん、そういう子!そういう委員長!!そういう子だよ!!」
「え、でも・・・」
「ないないないない! だからー、悪の組織ってのは、なんかとリンクできたり、人間じゃなかったり、
目の色が変わったり・・・・・・」
「それに全部当てはまるんだが」
ロックオンの必死の説得を聞いていたティエリアが、刹那の代わりに答える。
「俺はそのすべてに当てはまるぞ。リンクできるし、イノベイドだし、目もほら、金色になる」
ティエリアはそう言ってメガネをとったら金目になった。
「それでも!だとしてもだ!!」
「人の口癖をパクるな!!」
ティエリアからツッコミを受けても、ロックオンは認めていなかった。
いやいや、ないでしょ。こんな女の子みたいな子が、悪の組織ー?
「ていうか貴方、さっき俺のこと女の子って言いましたよね。俺は、女じゃないですよ」
「いやいやいや、それもありえないって!」
目の前の女の子(っぽい子)が女じゃない?あ、そっか、あれね!!
ロックオンは、走ったせいもあって頭がまだ混乱していた。
「君、あれでしょ!? 胸がないの気にしてる!?大丈夫、女は胸じゃないよ!!」
「だから違うって言ってるでしょう」
ティエリアはそういうと、ロックオンと話すのをやめ、刹那に向き直る。
「なんなんだ、君たちは。っていうか、あの人は」
「アイツは変態だ。そして、俺たちはソレスタルビーイングだ」
「おーい、刹っちゃーん」
ロックオンの叫びを無視して、ティエリアが怪訝そうに眉をひそめる。
「ソレスタルビーイング・・・?君たちが、本当に・・・?」
「ああ。俺が、俺たちが、ガンダムだ!」
「いや、そんなことは聞いていない」
刹那の口癖をティエリアはあっさりとかわし、フッと笑う。
「ならば見せてもらいたいな!君たちが、ソレスタルビーイングである理由を」
どっかで聞いたことがあるようなセリフだったが、仕方がない。
ロックオンは刹那に目配せをして、アレをやるぞ、と合図する。
(アレ・・・ってなんだっけ?)
刹那はそんなことを思うが、ロックオンは、そんなことは知らない。
「行くぜ刹那!俺たちがソレスタルビーイングである理由っつーか、証拠を見せるぜ!」
もうなんにでもなれ、で、刹那は声を張る。
「俺とロックオンは、ソレスタルビーイングの中でも特別な存在・・・!」
その言葉に、ロックオンがうんうんとうなずく。
「ガンダム戦隊、ソレンジャーだ!!!」
その言葉に、ロックオンはうんうんとうなずいたあと、あれ?と思う。
「刹那、今なんていった?」
「・・・ガンダム戦隊、ソレンジャー・・・」
「何それ!! この間考えただろ、敵に会ったときの!!勝手に決めんな!!」
「いや・・・だって忘れちゃったし・・・!」
「なんでだよ!!3時間かけて決めただろ!!
ホラ、手をここにして、『ガンダーム・・・」
そんな中ティエリアは。
悪役が必ずすること、正義の味方がしゃべったり変身しているシーンに攻撃を入れてはいけないという掟を、
しっかり守っていた。 |