「すみません!本当に大丈夫ですか!?」
ロックオンとぶつかってしまった少年が、落ちた荷物を拾いながら、ずっとその言葉を繰り返す。
「本当にすみません・・・!ケガとかは・・・」
「だから大丈夫だって。ケガもないよ」
ロックオンは笑いながら、右手をひらひらさせてみる。
だが少年は、食い下がり、
「いや、でも、本当に大丈夫なんでしょうか・・・」
と、心配そうな顔で見つめる。
「・・・あそこのマルチーズ」
「犬の心配だったのかよ!!」
「はい。まあ、これ飲んどきなさい」
ロックオンはそう言って、買ってきた缶コーヒーをアレルヤに渡した。
アレルヤはそれをしばらく見つめた後、ぽつりと呟く。
「ありがとうございます・・・。でも」
「ん?」
でも?とロックオンが不思議に思うと、アレルヤはしれっと言う。
「僕、ミルクが入ってないとダメなんですよね」
「・・・じゃあ飲むな」
ロックオンはアレルヤの手から缶コーヒーを取り返す。
「あの、あなたの名前は・・・?」
アレルヤが、おずおずと尋ねてくる。
「名前?ああ、ロックオン」
「ロックオン・・・さん?」
「ロックオンでいいよ」
ロックオンはそう言って、にっと笑う。
「じゃあ、君の名前は――」
「守秘義務があります」
「え?や、だからなま」
「守秘義務があります」
「・・・・・・」
「守秘義務があります」
「いや、なんも言ってないけど、オレ!」
ロックオンはベンチから立ち上がってそうツッコむ。
「ていうか何?君は守秘義務があんの?名前いえないの?」
「はい」
「そういう時はうまくはぐらかすんじゃねえのかな、普通」
ロックオンの正論を無視して、アレルヤはふう・・・とため息をつく。
「・・・あの。ちょっと、話を聞いてもらってもいいですか・・・」
「ん?」
ロックオンが缶コーヒーを開けて飲み始めると、アレルヤは淡々と語りだす。
「僕、実は悪の組織にいるんですけどね・・・」
「いやいや、それも守秘義務あるんじゃないの?言っちゃっていいの?」
「もう、いやなんです・・・」
「そんなことボスに言えよ。オレに言ったってどうにもなんないよ?」
「オレオレ詐欺をやらされたり、あ、でも、僕引っかかっちゃうんですけど、もう・・・、こんなこと・・・いやだ・・・!」
「いまどきオレオレ詐欺に引っかかるやつなんてそういないよ?お兄さんすごいね」
「悪事をするなら、もっとすごい悪事をしてみたい・・・!」
「おーい、本音でてるぞ!本音出てるよ、お兄さん!」
「っせーな!!人の話は黙って聞けよ!母ちゃんに習わなかったのかてめえ!!(ハレルヤ)」
「・・・す、すいません」
「だからよー、もっと働くんなら、スゲーことしたいわけよ。世界征服とか」
「(悪の組織には無理だろ)」
「んだとてめえ!!!」
「なんで聞こえてんだよ!!!」
ボケとツッコミがしっかりと成り立って、もうコントのような会話である。
そのうち公園にいたほかのお母さん方は、ヒソヒソと話し始める。
やだあ、あの人さっきのロリコンじゃないの?
まあ、ホントだわ!きっとあれね、ケンカしてること付き合ってるんじゃないの!!
きゃー!結構歳離れてそうじゃない!!
マジかよー。オレ、ロリコン扱いされてるよー。
ロックオンがそう思った時、武力介入してくるやつがいた。
「ロックオン!」
「刹那!!」
そのときロックオンには、刹那が神に見えたという。
「せ・・・、刹那あああ!刹っちゃああああんん!!」
いきおいあまって抱きつくロックオン。
だが刹那はそれを、「ロックオン気持ち悪い近づくな」と早口で話してしまうからすごいもの。
そしてそこに、アレルヤが加わる。
「はじめまして。ロックオンのお友達?」
「違う。保護者だ」
「オイ」
「へー、すごいねえ。お名前はなんていうの?」
「おまえツッコめよ」
「ガン・ダム・ダー・ブルオー」
「へー、すごいねえ。ミドルネームも入ってるね。なんて呼べばいい?」
「だからおまえツッコめよ」
「エクシア」
「エクシアくんかー。いい名前だねー」
「いや、さっきエクシアって入ってなかっただろ!おまえらどんだけテキトーなんだよ!」
「ロックオンと同じにされては困る。あんなダサい名前を堂々とは普通、言えないがな」
「確かにねえ」
「うるせー、余計な世話だ!!」
「あんたの名前は?」
「そいつ、守秘義務あるって言ってたぜ」
「ん?名前?アレルヤ」
「おいィィィィ!守秘義務どーしたおまえェェェェ!」
「じゃあねー、エクシアくん。また話そーね」
「ああ」
会話終了。
「おまえらよく会話が成り立ってたよな」
そういうロックオンの顔には、コーラのあとがある。
これは、刹那がロックオンにあの会話のあと、コーラをあげたのだが、その中から大量のコーラが飛び出たためである。
「おまえらの会話、ツッコミいなかったじゃん。ボケだけだったじゃん」
「おまえはアレだな、人の会話にアゲ足ばかりとっていたな。母ちゃんに習わなかったのか!」
「おまえさっきの会話聞いてただろ!!」
そんな会話をしながら、刹那とロックオンは、帰って行った。 |
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