「はぁっ、はっ・・・。 くっ・・・」
ティエリアは、息を切らしながら、恨めしそうにロックオンと刹那を見上げた。
「さあ、これでもう反撃はできねえだろ・・・?腹くくれよ、ティエリアさんよ」
ロックオンは倒れているティエリアに銃口を向けると、傷だらけの顔で小さく笑った。
「もう諦めな。諦めて、悪の組織の居場所を吐いちまえよ」
「・・・・・・断るっ・・・」
ティエリアは、銃口にもひるまず、不敵に笑う。
そんなティエリアを見てから、刹那とロックオンは顔を見合わせ、それからロックオンは銃をおろす。
「・・・!」
「やれやれ、頑固だねえ」
ロックオンはそう言って笑うと、刹那とともに、ティエリアに背中をむけ歩き出す。
「・・・待て・・・!どういうことだ、見逃すなんて・・・!」
「殺しはしねえよ」
ロックオンは振り返ってそう呟くと、歩いていってしまった。刹那も一緒に。
「・・・・・・」
情けをかけられた、この僕が・・・!
ティエリアは悔しい気持ちでいっぱいになりながら、ゆっくりと立ち上がり、ロックオンたちとは反対方向へと歩いていった。
「・・・・・・ロックオン」
「なんだよ?」
ロックオンは、こちらを見上げている刹那に、あえて目を合わせないようにしながら聞き返した。
「・・・なぜ、ティエリア・アーデにとどめをささなかった?」
「・・・・・・言ったろ。殺しはしねえんだよ」
「・・・・・・」
刹那は、ロックオンのあとを、黙ってついていった。
「くっ・・・!」
ティエリアは、痛む体を抑えながら、あてもなく歩いていた。
ヴェーダに・・・、ヴェーダになんて言えばいい・・・?
頭の中は、ずっとそのことでいっぱいだった。
ヴェーダ・・・!
何度目かわからない同じ思考が頭をかすめたあと、ティエリアはその人を見つけた。
「・・・ヴェー・・・ダ・・・?」
ティエリアはヴェーダを見つけると、だっと走り出した。
「ヴェーダ・・・、どうして、ここに・・・!」
「ティエリア」
ヴェーダはティエリアの言葉をさえぎると、ティエリアに、バズーカの銃口を向けた。
「・・・ヴェーダ?」
ティエリアの顔が、みるみるこわばっていく。
「ティエリア。役立たずには用はないんだ」
「・・・・・・・え」
ティエリアは、言っている意味が理解できなかった。
用はない・・・?ヴェーダが?僕に?もう、用はない・・・?
「ヴェ、ヴェーダ!」
ティエリアはヴェーダの意見が覆られないかと、必死に声を大きくして叫ぶ。
「ヴェーダ、待ってください!次は、次は成功します!次は、ソレスタルビーイングを――」
「言っただろう」
ヴェーダは、バズーカのトリガーをひいた。
「役立たずに、用はない」
ティエリアは、あふれだす光を、ただ呆然と見てるしかなかった。
死ぬのか・・・?
その一言が、頭をよぎった。 けれど、動くこともできない。
僕は・・・僕は・・・!
すっと目を閉じた。
せめて逝くなら、無駄な抵抗など・・・!
「・・・・・・?」
おかしい、とティエリアは思った。
いくら待っても、痛みはない。
・・・一瞬で死んだのか・・・?
そう思い、ふっと目を開けたとき。そこには。
「・・・あ・・・あなたは・・・!」
さっきまで戦っていた、スナイパーの姿。
「ロックオン・・・ストラトス・・・?」
ロックオンは、にっと笑うと、ゆっくりと崩れ落ちた。
「ロ、ロックオン!」
ティエリアはあわててロックオンを起こす。
「だ、大丈夫ですか!?どこを、ケガして・・・!」
「おいおい、これが大丈夫に見えんのかよ?」
ロックオンはそう言うと、上半身だけ起き上がる。
「まあいいんだ・・・。ボスは見つけられたしな・・」
「え・・・?」
事態が飲み込めないティエリアを気にせず、ロックオンは声を張り上げる。
「行け、刹那!」
その言葉のすぐあと、ヴェーダの体は散った。
刹那のセブンソードによって。
ロックオンは、そこまで見届けると、満足そうに目を閉じた。
「・・・ロックオン?」
ティエリアが呟く声が聞こえた。
だが、ロックオンの意識は、そこで途切れた。
「誤算だったよ。まさかヴェーダがやられるとはね」
リボンズは、リジェネと二人、ソファに座って呟いた。
しかしリジェネは、その言葉を耳ざとく聴きつける。
「へえ、君にもあるんだね、リボンズ。予想できないことが」
「リジェネ?僕だって、そのくらいはあるよ」
リボンズはそういって、軽く微笑む。
「そうかい。にしてもひどいよ、リボンズ。ティエリアはこっちにつれてくるって約束だったろ」
リジェネの反論に、リボンズはしらじらしく答える。
「悪かったね。忘れてたよ」
「ははは、珍しい(バーカ、何言ってんだよ。オメーが忘れるわけねーだろ。大方わざとだろ?俺への嫌がらせでわざとなんだろ?)」
「・・・リジェネ、脳量子波ダダ漏れだから」
そんな井野辺家の、のどかなひととき。
数週間後―――。
「いでっ、いでえ!!」
「騒がないでください、ロックオン。消毒できない」
「消毒とかいらねえよ!もう治ったの!おまえは心配しすぎ!!」
ティエリアは、ソレスタルビーイングに入っていた。
そして今は、ロックオンの消毒中。
「ティエリア、そのへんにしておけ。あまりしつこいと嫌われるぞ」
クールに返した刹那は、60/1エクシアを作っている。
「心配しよう!おまえは少しは心配しよう!」
「・・・・・・」
「無視すんな!あと、おまえは今回何も働いてないだろ!報告書にそう書くからな!!」
「最後にヴェーダを倒したのは俺だ」
「いいとこどりしやがって!!!」
刹那とロックオンの言い争いを見ながら、ティエリアは小さく微笑んだ。
―――これが、人間か。 |
機動戦士ガンダム00
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